北海道上川町とTSIホールディングスが包括連携協定を締結-持続可能な地域づくりを目指す
北海道上川町と株式会社TSIホールディングスは10月29日、「持続可能な地域づくりの実現に向けた包括連携協定」を締結した。本協定では、TSIグループが有する多種多様なブランドの開発で培ったノウハウと上川町が持つ豊富な地域資源を融合させ、地域起点の新たなライフスタイルやモノづくりの創出など持続的な発展を目指した取り組みを行っていく。
住民が夢や希望を持ち、誇りを感じられる町づくりへ
北海道上川町は北海道のほぼ中央に広がる日本最大の山岳自然公園「大雪山国立公園」の北方部に位置する自然豊かな町。人口3,500人ほどの小さな町でありながら、近年では官民一体となり積極的に移住者や企業の誘致活動に取り組むほか、首都圏に本社を置く多くの企業との連携も深めている。
TSIホールディングスは2011年設立のアパレル企業。主に百貨店やショッピングセンター等に出典するアパレルメーカーなど、子会社およびグループ会社の事業活動の管理を行っており、多種多様なブランドを有している。
10月29日、東京・港区のTSIホールディングス本社で本協定の調印式が行われ、下地毅TSIホールディングス代表取締役社長と佐藤芳治上川町町長が出席した。
式の冒頭、下地社長は「当社グループのブランド開発ノウハウと上川町が持つ豊富な地域資源を融合させ、持続的な発展を目指した取り組みをスタートさせていく」とし、地域経済への貢献や町への移住者による人口増加も図っていきたいとした。また、下地社長は上川町に惹かれたきっかけを「ひとえに佐藤町長のお人柄にある」と伝え、「町長の町への深い愛情、次世代への思い、自然を愛する心に大変感銘を受け、先進的な思想にも共感を覚えた。今後は今までのアパレルだけで行っていた都市型事業だけでなく、地域社会との新たな接点を築いていきたいと考えている」と展望を述べた。
続いて佐藤町長は「本協定は上川町にとっても大きな意義があることだ」と言及。都市部への人口の一極集中により、地方の町は苦しみ悩んでいると伝えた。一方で「今後、町の価値は単なる人の数ではなく、質が問われていくようになる」と佐藤町長は提言したうえで「SDGsで町が存在するだけでなく、幸せを感じられる町づくりをしたい。また、どんな小さなことでも挑戦をし続けることが大事。諦めてしまえば停滞ではなく後退に進んでしまう。住民の方々が夢や希望を持ち、誇りを感じられる町づくりをしていきたいと思っているが、まさに本協定がそのことに結びついていくだろう」と意気込みを語った。
住民の人生の節目、節目にTSIを
本協定の連携事業・構想については下地社長が説明。TSIホールディングスがアパレル領域で得たブランドコンテンツやノウハウ、上川町が持つ豊富な地域資源や自然環境を生かし、以下の項目に取り組んでいくことを掲げた。
(1)総面積の94%が森林を占める「林業のまち」の林業事業者を怪我から守る衣服の提供
(2)農作物や森林の被害を防ぐために熊笹の刈払い運動の推進
(3)層雲峡オートキャンプ場に流れる小川や木の橋の再整備
(4)森を作って自然体験の充実やCO2削減の一助に、自然と共生するサステナブルな社会の実現へ
(5)子どもたちに向けての“服育”
(6)町の方が大切にしてきた服のリメイク活動
(7)上川町の木材を活用し、地域企業と連携し、当社(TSIホールディングス)のブランドが商品や体験をプロデュース
「上川町の皆さんの人生の節目、節目にTSIが存在していけたらと考えている。町の皆さんの生活に寄り添い、持続可能な循環を作っていきたい。また具体的な取り組みが決まり次第、ご案内したいと思っている」(下地社長)
協定書の調印後に行われた質疑応答では会場から「TSIホールディングスと上川町が連携することによるメリット」について改めて質問がなされた。下地社長はこの質疑に対し「次の世代に繋ぐ事業が出来ることは我々も大きなモチベーション。アパレルの当社が持つデザインソースを生かしていきたいと思っているが、可能であれば制服や自治体のウェアの開発にもトライアルしたい」と意気込みを述べた。また、佐藤町長は「包括連携は幅広い。上川町としては子どもと地元企業との関係が希薄であることも課題だと思っているので、もっと両者の距離感を縮めて、子どもたちに地域も企業を知ってもらいたいと思っている」と話した。
(執筆:デジタル行政 編集部 柏 海)