熊本から豪雨経験の学びを伝える デジタルで避難所のコロナ感染対策 [ニュース]
令和2年7月豪雨による球磨川氾濫洪水災害からの復興を進めている熊本県人吉市は、令和3年10月17日(日)に開催した人吉市総合防災訓練において、地方自治体向けソリューションの開発・販売を行うGcomホールディングス株式会社と実証を進めている避難所のデジタル管理サービスの体験会「避難所DX体験会」を開催した。また、熊本県宇城市も同実証事業に基づき、令和3年10月28日(木)に避難所DX体験会を開催した。「防災訓練を通じて住民にデジタルを身近に実感してもらう」リアルな避難所DX体験会を開催するのは、熊本県人吉市・宇城市が九州初となる。
■避難所DX体験会のテーマ1:避難所に密を作らない
1)全国的な地域課題
コロナ禍においては、感染拡大防止のために人と人との間に距離を確保する社会的距離(ソーシャルディスタンス)などが求められる。これは災害時に開設される避難所でも例外ではなく、距離の確保や体調不良者のゾーニングなどが重要になる。一方で、そうした状況下においては各避難所の収容可能人数が従来と比べ少なくなる可能性があり、避難所に人が集中し、入れなくなる「たらい回し」や「避難所難民」といったリスクが高くなる。
2)デジタルによって「避難先に迷わない」世界の実現
避難者はマップ型リアルタイム混雑情報配信サービスにPCやスマートフォン等でアクセスすることで、アプリなどのダウンロード不要で各避難所の位置や混み具合を確認することができる。後述の非接触型のスマート受付との連動で避難所の混雑状況はリアルタイムに更新される。住民が自ら最寄りの空き避難所の検索や設備情報などを確認できるようになるため、住民の判断で分散避難を図ることができる。定員オーバーで避難所に入れないといった避難所難民を回避しやすくなる。
3)期待される効果「避難所運営の効率化による運営者の負担軽減と利用者の利便性向上を両立」
混雑情報の提供により分散避難が促進されることで、定員オーバーによる他避難所の案内業務が軽減される。なお、定員等も随時変更可能であるため、臨機応変な避難所管理が可能。
■避難所DX体験会のテーマ2:避難所の受付に行列を作らない
1)全国的な地域課題
避難所の運営者も避難所を開設する際に、避難者の誘導だけでなく避難者の情報登録や定期的な情報集計・共有、備蓄物の管理など多くの作業が発生しており、その対応に多くの労力を割かれ円滑な運営が難しいといった課題がある。このような状況下でコロナ禍によって距離の確保を図った結果、住民が雨のなか避難所の受付に大行列をなす地域もあり、避難所運営の効率化・省力化が求められていた。
2)デジタルによって「避難者カードを書かない、避難所の受付で待たない」世界の実現
避難者の情報を非接触かつ自動的にデータ化し管理・分析することができるようになる。スマートフォンを持っている避難者は、事前にユーザー登録をしておくことで、避難所では2次元バーコードを提示するだけで受付を済ませることができる。他にもマイナンバーカードや免許証といった身分証の情報をカメラ式OCRで読み取り受付を行うことができるため、デジタルに馴染みの薄い世代も取り残しがない。
3)期待される効果「避難所運営の効率化による運営者の負担軽減と利用者の利便性向上を両立」
避難所の受付時に避難者情報を自動的にデータ化できるため、これまで避難者の情報登録や集計にかかっていた時間を大幅に短縮できる。
(執筆:デジタル行政 編集部 與那嶺 俊)