ヤフーの「災害協定」締結先が1200自治体を突破
通知で知る身の回りの危険
ヤフーが災害時の情報発信を支援する「災害協定」の締結先は、昨年12月に1200自治体を超えた。
災害大国といわれる日本、いざという時の緊急災害情報を被災者にいかに素早く効果的に届けるか、その知見は増え、技術は日々向上している。
過剰アクセスでダウンする自治体HP
自然災害が発生すると、情報を求めて自治体のホームページにはアクセスが集中する。その数が一定数を超えると、ホームページはダウンして、修復まで閲覧不能状態になる。こういった状況は混乱を助長して、緊急時で駆け回る自治体職員の仕事をさらに増やしてしまう。
ヤフーは災害協定を締結した自治体ホームページのキャッシュサイト(複製サイト)をヤフーのサーバー上に作成し表示をおこなうことで自治体ホームページへのアクセスを軽減する。また、災害時には自治体名で検索した検索結果ページで表示する自治体ホームページへのリンクを、キャッシュサイトへ切り替え誘導をおこなっている。
自治体からも積極的に知らせる
2000万人以上が利用する「Yahoo!防災速報」アプリと日本最大級の利用者がいる「Yahoo! JAPAN」アプリを通して、自治体が災害情報を指定した地域の利用者に配信も可能だ。
「Yahoo!防災速報」アプリで、地点登録(3箇所まで可能)を行った場所と、ユーザーが自分の位置情報をオンにしている場合は、ユーザーが現在位置する場所に関する自治体からの緊急情報がユーザーに届けられる。
また「Yahoo! JAPAN」アプリでも、地域設定した地域の情報をユーザーに届けられる。
いざという時に避難する場所を確認するために
避難場所は、災害の種別により避難できる場所が決まっている。自治体としては正しい避難行動を促すための情報として、自治体が指定する避難場所データを、ヤフーの避難場所マップに掲載する。
地震情報、津波予報、河川洪水、土砂災害、気象警報、火山情報、避難情報、といった情報を通知する際に避難場所マップの表示もおこなわれ避難場所を確認することができる。デジタルインフラとして存在感を発揮するヤフーならではの試みだ。
アプリ配信ツールの使い方はとても簡単で、タイトルと本文を書き込み、プレビューの後に送信ボタンを押すと、ほぼリアルタイムで通知がユーザーに届く。
「注意喚起を配信というのは、昔はあまり考えられませんでしたが、近年は、事前の注意喚起というものが重要になってきています」とCSR推進室 災害協定担当の森禎行は語る。
また最近では、知事メッセージ、市長メッセージ、町長メッセージ、村長メッセージなど、地域の自治体の長からのメッセージという形式も増えており、こういったものは特によく見てもらえるという。
クマの目撃情報までカヴァーする
しかし、この協定で扱われる災害の定義とはどのようなものだろうか。地震や、火山の噴火、土砂崩れや、津波だろうか。
配信の事例を見ると、その内容は驚くほど多様である。
地域の断水・給水の情報、台風接近に関する注意喚起、ボランティアの募集、クマの目撃情報まで、地域で行動や準備が必要な事例は多く、最近は自治体からコロナ感染症に関する情報も配信される。
1ヵ所ずつ訪問して締結を取りつけた
この協定は無料であり、自治体はヤフーに災害協定の利用料を払う必要がない。
県庁を含めると国内に1778の自治体があり、そのうち現状では1231の自治体(2021年1月末現在)とヤフーは締結を結んでいる。46の都道府県をカヴァーしており、人口におけるカヴァー率でいうとおよそ90%以上のエリアで協定を締結している。
大手IT企業ヤフーは、デジタルネットワークを駆使して、どのように自治体に協定を持ちかけたのかと質問すると、意外な答えが返ってきた。
「一ヵ所ずつおうかがいして説明したり、年に数回ほど、災害協定セミナーを開催し、集まった皆様にご案内させていただきました」CSR推進室 災害協定担当の関口和明はこう答える。
2011年の最初の締結から、沖縄から北海道まで、関口や森をはじめとする数名が、訪問やセミナー開催、電話やメールなどあらゆる手段を駆使し、最大で年間およそ300という驚異的な数の自治体へアクセスをおこない地道に締結の数を増やしていった。
最近はコロナ禍にあって訪問や人を集めることも難しいので、オンラインで自治体関係者の参加をつのり、説明の機会を用意しているという。
自治体がフェイスブック、ツイッター、ラインなどを使って災害時の情報発信をするケースもあるが、ヤフーの「自治体からの緊急情報」は利用している自治体の数で、こういったSNSなどを使った自治体の数を上回っている。
(執筆:デジタル行政 編集部 長野 光)