東三河広域連合が実現!介護認定審査会のオンライン化とは?
2021年12月15日に開催された「全国IIJ電子@連絡帳推進会議- 地域サミット2021 -」で、愛知県蒲郡市 健康福祉部 長寿課 金田美里氏が、東三河広域連合の介護認定審査会のオンライン化の取り組みについて講演を行った。
東三河広域連合で構築した介護認定電子審査会システムとは
―介護認定審査会のオンライン化に取り組んだ背景
蒲郡市の介護保険は、平成30年度より東三河広域連合として東三河8市町村で運営しています。介護認定審査会の開催については、委員の先生方の利便性やそれまでの各市町村の状況等を考慮し、各市町村で行うことになりました。しかし、広域連合や各市町村、審査会委員との連携を図る必要があったため、「東三河広域連合 介護認定電子審査会システム」の利用を開始しました。
―「東三河広域連合 介護認定電子審査会システム」について
「東三河広域連合 介護認定電子審査会システム」は、介護保険認定審査会を「東三河ほいっぷネットワーク」で結び、審査会資料の配布や事前審査、情報集約等を行うシステムです。
「東三河ほいっぷネットワーク」とは、東三河電子連絡帳協議会が運営する多職種連携のためのICTネットワークで、平成25年4月に豊橋市および田原市の医師会、歯科医師会、行政等により発足し、東三河地域全体への普及が進められています。
この介護認定電子審査会システムの利用が開始されたことで、それまで紙で提出を依頼していた事前審査の内容についてシステム上で行えるようになり、審査委員の先生方が行う作業を全てシステム上で行えるようになりました。
介護認定電子審査会システムを活用した蒲郡市の電子審査会
―蒲郡市の介護認定審査会について
令和3年12月現在、蒲郡市の介護認定審査会委員は41名です。内訳は医師16名、歯科医師8名、薬剤師3名、保健師3名、看護師3名、理学療法士1名、作業療法士1名、福祉関係職員6名です。8つの合議体があり、審査会には3名の委員が出席します。1か月に10回前後、年間110回程度審査会を開催しています。
同じように、広域連合内各市町村が規模に応じた委員の人数や回数で審査会を運営し、委員の推薦や審査会の開催日の決定も各市町村で行っています。各審査会への審査資料の割り当てやシステムへのアップは広域連合が行っています。
―介護認定電子審査会の流れについて
東三河広域連合に提出された「主治医意見書」と「訪問調査票」をPDFに変換し、資料掲載の準備を行います。審査会10日前までに広域連合から電子審査会システムに資料をアップします。
資料掲載が完了すると、各審査委員にメールで事前審査ができるようになったことが通知されます。審査資料は電子審査会システム上に掲載されるので、パソコンやタブレットを利用して資料を確認し、2次判定の登録を行っていただきます。
1回の審査会では概ね30件前後の症例について審査しています。
審査会の2日前までに二次審査の判定をシステム上で入力していただき、その後、3人の先生方の意見を事務局がとりまとめて結果を先生方へ送付します。
審査会当日は一次判定の確定や特定疾病の確認をします。また、3人の先生方のご意見が一致しなかった症例について審議をしていただき、最終的な介護度、有効期間、要介護の状態像などを決定します。事前審査で一致したものについては異議がないことを確認して包括的に介護度を決定します。
なお、令和3年3月より新型コロナウィルス感染症の感染拡大防止のため、Microsoft Teamsを利用してリモートで審査会に参加できるようになりました。
審査会が終了すると、審査結果がPDFで出力されます。出力されたPDFを介護保険システムからOCR取り込みを行うことで、判定結果を介護保険システムに登録することができます。
審査会終了後2週間が経過すると、電子審査会システムの資料は削除されます。
電子申請の流れ(広域連合が行う作業)
電子申請の流れ(審査委員が行う作業)
電子申請の流れ(市町村が行う作業)
―審査会委員による事前審査について
以下は審査会委員が事前審査を行う際の見本です。審査対象者が一覧で確認できます。資料を確認したい対象者を選択すると資料確認画面へ移ります。
以下は審査資料の確認画面で、「主治医意見書」や「認定調査票」について確認ができるようになっています。電子審査会システムを閲覧する手続きを行えば、パソコン、タブレット、スマートフォンなどの端末からでも資料の閲覧や審査を行うことができます。
複数の端末を登録することができるので、審査委員には使用する端末を登録してもらい、使いたいときに使いたい端末で資料の閲覧・審査ができるようになっています。資料の閲覧画面は拡大することや2画面表示にすることもできるので、自分の見やすい状態で確認していただくことができます。
1次判定の結果が表示されているので、各審査委員はそれぞれ2次判定の結果を選択します。1次判定から介護度を変更する場合は変更理由を選択していただき、特記事項や「主治医意見書」のどの部分から判断したかが分かるようになっています。
この審査は、審査会2日前までにお願いしています。
審査会2日前になると、自動的に審査画面にロックが掛かるため、審査委員は編集することができなくなります。閲覧する資料については印刷することはできません。
簡素化対象者である場合は、一覧に簡素化対象者であることが表示されます。簡素化対象者の資料についても審査委員は同じように確認することができます。
審査会2日前になると、事務局で内容の取りまとめを行います。審査委員が選択した結果が色付きで表示されるので、意見が分かれている事例を確認し、各委員の意見や介護度を変更した場合の変更理由内容について取りまとめを行います。
取りまとめた結果は「東三河ほいっぷネットワーク」に掲載し、当日、協議が必要な事例について委員が確認できるようにします。取りまとめの結果を掲載すると、自動的に委員へメールで通知が送られます。
審査会当日、審査が確定すると、事務局で結果を入力します。最後に審査内容の確認をして、確定のサインを議長がします。画面右上の確定ボタンを押すことで、議長のサイン登録ができます。
サイン登録することで審査結果が確定し、審査結果のOCR票を出力できるようになります。介護保険システムにOCR票を読み込むと、審査結果がシステム上に反映されます。この操作を行うことで、審査会の一連の流れが完了します。
―リモート審査会について
令和3年3月より、新型コロナウィルス感染症拡大防止のため、リモートで審査会に参加できるようになりました。使用ソフトはMicrosoft Teamsです。マイク機能とMicrosoft EdgeまたはGoogle Chromeが使用可能な端末であることが利用条件になります。カメラ機能がなくても音声が届けば会議に参加できるため、必須にはしていません。Teamsを利用できる環境があれば、希望する委員はリモートで参加できます。議長がリモートで出席する場合は、審査内容の確定サインはFAXで送付していただいています。
市役所の中の会議室を1室審査会用の部屋として確保しています。審査委員が資料閲覧に使用するノートパソコン3台と、広域連合から貸与されているタブレット端末が4台常備されています。通常は各委員にパソコンとタブレットを1台ずつ用意しており、委員が使いやすい端末で資料を閲覧しながら審査会が行えるようにしています。
リモートで参加する委員がいる場合は、パソコンを資料閲覧用の端末に、タブレットをTeams専用の端末にしています。資料の閲覧がスムーズに行えるよう、電子審査会システムの利用を始めた際にWi-Fi環境を整えています。そのため、Teamsの利用を始めても通信速度を心配することなく審査会を進めることができます。マイク・スピーカーを使用し、ハウリング防止のため、各端末のマイク・スピーカーをOFFにすることで音声が聞きとりやすいよう工夫しています。
―リモート会議の参加方法
電子審査会システムの審査対象一覧画面から、直接Teams会議に参加することができます。専用アプリをダウンロードする必要はありません。委員の名前を入力し、参加ボタンを押すことで、事務局に通知が届きます。参加承認を事務局が行うと、会議に参加することができます。
3割程度の委員がリモートで参加しています。各審査会に1名程度リモートで参加しているケースが多くあります。従来通り全員が参集される場合もあります。「対面の方が話をしやすい」、「リモートで参加したが音声が聞き取りづらかった」といった声もあります。
―今後の課題について
電子審査会導入後3年が経過し、ペーパーレスで審査会が行えるようになり、2次判定の取りまとめ作業や審査委員に提出してもらう書類作成の負担が軽減されました。しかし、審査結果をクリック1つで入力できるため、誤入力も起きやすく、2日前の集約時に対応に困る時があります。
例えば、1次判定非該当対象者に要介護5が選択されているような明らかな誤入力の場合のほか、1次判定通りの選択をしたつもりが、誤って隣の介護度を選択して1つ介護度を上げてしまったケースなどは、審査委員が介護度を上げるつもりなのか判断ができない場合もあり、審査委員の確認に時間を要することもあります。変更理由なく介護度を上げて選択している場合や、有効期間等入力漏れがある場合に、事前審査の段階で審査委員に確認を促すメッセージを表示するなどのシステム改修が望まれます。
また、リモート審査会については、「審査会室の密を緩和できる」、「忙しい中参加いただいている委員の移動時間が無くなる」などのメリットがありますが、使用しているマイクや室内の環境により音声が聞き取りにくいことがあります。審査委員側の環境に原因がある場合は原因の特定が難しく、すぐに対応することができません。
審査会への参加方法についても、事前にリモートで参加される委員がいるか知ることができないため、会議室をリモート用に準備する必要があるか確認するためにも、事前審査の際に参加方法を確認できるようなシステム改修が望まれます。
オンラインで審査会を行う環境を整えてきましたが、議長がリモートで参加した際は、サインを電子データでもらうことができず、署名した用紙をFAXで送っていただいているため、この点についてもオンラインで完結できるようになればと思っています。
これらの課題解決に取り組みつつ、審査委員や事務局の負担軽減に繋がる審査会の運営方法について今後も検討していきたいと考えています。
(執筆:デジタル行政 編集部 米谷 知子)