「デジタル改革共創プラットフォーム」を情報源に、システム標準化を乗り切れるか?(後編)[インタビュー]
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デジタル改革共創プラットフォーム 初代アンバサダーの一人
和歌山市総務局 総務部 デジタル推進課 システム班長の小松亮さん(後列右から2人目)。
デジタル推進課のシステム標準化を担当するメンバーと、サーバ室内での写真。
ガバメントクラウドに移行すると、ここも空きスペースになる。
前編に続き、「デジタル改革共創プラットフォーム」の活用法や今後の展望、自治体間の人材共有の可能性まで、システム標準化に携わる名古屋市総務局 行政DX推進部 デジタル改革推進課 課長補佐 高橋広和さん、和歌山市総務局 総務部 デジタル推進課 システム班長の小松亮さんに聞く。
(聞き手:デジタル行政 編集部 手柴史子)
道筋が見えなくても知恵を出し合う
―膨大な資料、複雑な内容のために、誰にも理解できないといったことはないのでしょうか?
小松:資料は出ていても、進め方や対応の仕方が明確になってない場合があります。説明が難しいのですが、例えば「こうした書き方、金額を記載しなさい」という指定はあるものの、書き込むパターンが複数あって迷ってしまうなど。概念的なところは掴めても、実際どうするかに落とし込むと、自治体側には分からないことが多いという感じでしょうか。正解が分からない中で、知恵を出し合っていることはよくあります。
どうしても結論が出なければ、最終的には、正式な問い合わせルートで確認する必要がありますが、共創プラットフォームでは色々な自治体の考え方を聞けるし、もしかしたらすでに正式な窓口から回答を得た方もいるかもしれないので、期待を込めて投稿される方も多いのではないかと思います。
―結論が出ないにしても、何かしらの道筋は見えてくるのでしょうか?
小松:見えてくることもあるし、全然見えないこともあります。しかし、答えを出すことももちろん大切ですが、誰にも相談できない、聞けないという方も中にはいらっしゃるので、「その気持ち理解できる」「皆さん悩みながら進めている」と伝わるだけでもいいのではという気もします。高橋さんもおっしゃった通り、根拠のないことを言うのが一番危ないので、分からないことは分からないという前提でやり取りをするよう心がけています。
―それでも共創プラットフォームは有効に活用されていると感じますか?
高橋:全国で同じ悩み、同じ課題を抱えている仲間がたくさんいる、それだけでも勇気づけられる側面はあると思います。課題が解決することもあれば、しないこともあるのですが、どこともつながらずに、自分の自治体の中だけで悶々と一人悩むよりは、プラットフォームの場で吐き出すことによって、メンタルが軽くなるといいと思っています。
小松:当初は、自治体の中でも情報部門の職員が活用できるチャンネルが圧倒的に多かった印象でしたが、最近では、選挙事務の効率化や、防災・災害対策といったチャンネルも作成されました。さまざまなジャンルのDXに関するチャンネルが増えてきているので、これからより多くの自治体職員が活用できる場面が増えてくると思います。
―政府とのやり取りに難しさを感じることはありますか? また、それは共創プラットフォームによって改善されているのでしょうか?
高橋:国としては、事務連絡や説明会などを通して確定事項を周知されるわけですが、通知や説明会資料だけでは読み取れないことは多々あります。また疑問が生じても、国の方で検討過程であれば表に出てこないこともあります。なかなか知り得ないことも、共創プラットフォームでは、非公式扱いながら国の担当者の方が言及されたり、補足説明をされたりすることがあります。
小松:自治体間の会話は、フラットに横展開する内容が多いんですよ。ただ、国の方とコミュニケーションを取る際には、自治体からの問い合わせがほとんど。本来、そうした問い合わせは、基本的に市町村から都道府県へ、都道府県から国へ届くもの。共創プラットフォームでは答えられないから、正式ルートを使って欲しいのだと思います。現在(2025年1月時点)、国の方の登録は全体の約16%だそうです。問い合わせということよりも、何らかの事業について意見交換したいといった内容の方が、入りやすいのではと感じます。
ゴールへの最短距離を発見
―課題を挙げるとすれば何でしょう?
高橋:登録者は増えていますが、投稿は特定の人に偏ってしまっている感があります。常連化することで、投稿しづらいという声があると聞いています。これは共創プラットフォームに限らず、ネット上のコミュニティ特有で、ある程度大きくなってくると突き当たる課題だと思います。
小松:詳しい人がいる中、自分の知識で投稿していいのか?と躊躇する方もいるようです。しかし、初心者の方が何でも聞きやすく、自由に使える空気感は保ち続けたいと思っています。
高橋:当然、利用者の皆さんに投稿を強制するものではないと思いますが、共創プラットフォームには過去に遡って膨大な量の投稿が存在します。自分が知りたい情報がピッタリあるかどうかは、なかなか難しいと思うのです。たまたまヒットすることもあるかもしれませんが、古い場合もあるので、投稿して自ら情報を取りにいくスタンスの方が、より有効に活用できるのではと思います。せっかく参加するなら、積極的にどんどん質問した方が、おそらく最新の情報が得られやすくなります。
―今後、どのような可能性があると思いますか?
高橋:日頃はオンラインでやり取りをしていますが、前述したオフラインでのアンバサダーとのセッションやミーティングはとても良かったですね。オフラインならではの信頼関係の熟成、全国の仲間とのつながりの拡大を期待しています。アンバサダーだけでなく、利用者全員がそうした機会を持てればいいと考えています。
小松:共創プラットフォームで活動している中で、好事例として紹介されていなくても、自治体職員の中には非常に良い取り組みをしている方や、日頃努力を続けている方が多いことに気づきました。そういった方が少しでも脚光を浴びれるように、昼休み時に、事例紹介の勉強会を開催しました。そうした場を設けることにより、新たな横のつながりが生まれることもあります。幸い共創プラットフォームのおかげで多くの知り合いができたので、これからは頑張っている方を応援したり、その頑張りを他所でも生かせるようにしていきたいと思っています。
また、先ほど申し上げたように、例えばシステム標準化の補助金でも、補助対象か補助対象外かといった質問や、申請の際の様式の記載方法の質問が多く投稿されています。国費を使う上で仕方がないことかもしれませんが、果たして1,700以上ある自治体全てで、この事務をやることが合理的なのかと疑問に感じることもあります。自治体間で人材の共有化ができないか、そこに共創プラットフォームを活用できないかも考えていきたいと思います。
―勉強会について教えてください。
小松:共創プラットフォームで色々な投稿を見て、「この取り組みいいな」と思ったら、直接連絡を取り、昼休みを使って事例紹介をやってみないかという声かけをしています。了承いただけたら、共創プラットフォーム内で告知し、参加希望者を募ります。和歌山市にもZoomのライセンスがありますので、予約が入っていなければ使うことができます。
―自治体間での人材共有化は実現可能でしょうか?
小松:現場レベルではかなり職員数が少なく、むしろ足りていないという自治体も多いです。和歌山市だとまだ人はいますが、県下の町村さんの話を聞いていると、いくつもの事務を掛け持ちしている方がいらっしゃいます。そうした中、システム標準化のような細かいルールがある事務を、全ての自治体でやれるのか、疑問視する声も上がっています。和歌山県内でも、事務を共同化していかないともう持たないという話をよくします。例えば補助金申請、国への事業計画書提出などは、和歌山県下30 市町村バラバラで作成するのではなく、もっと少人数で30市町村分に対応できるのでは?と。体制を含めて考えていく必要があると思います。
高橋:名古屋市は政令指定都市ですので、状況は随分違うと思います。ただ、事務の共同化など、何か大きく物事を変えていく時には、頻繁に意見交換をする必要がありますよね。共創プラットフォームを使えば、県の共通課題について、もっと身近に議論できるのではないでしょうか。
共創プラットフォームの中には、事業単位だけではなく地域ごとのチャンネルもあります。20 の政令指定都市で会議を行う際、以前は情報交換や意見交換の機会がオフラインしかなく、場所にも時間にも限界がありましたが、今は気軽にやり取りができるようになりました。
―参加を検討されている方へメッセージを。
高橋: SNS のように忌避感を持たれている方もいらっしゃるかもしれませんが、登録は本名かつ、どこの職員かを明記する必要があります。また、メールアドレスも自治体のものでないと承認がおりません。しっかりと本人確認がされているので、安心して飛び込んで、見て、体験していただきたいと思います。
小松:自治体の職員数が減っている中、誰かに聞きたくても聞けない現場が増えてきていると思います。前の部署の人が全くいないということもあるようです。そういった時に共創プラットフォームで分からないことや悩みごとを投稿すると、他自治体の職員が助けてくれたり、相談に乗ってくれたりもします。ゴールへの最短距離の発見を可能にするプラットフォームだと実感しているので、ぜひ参加していただければと思います。
アンバサダープロフィール

名古屋市総務局 行政DX推進部 デジタル改革推進課 課長補佐 高橋広和さん
1998年名古屋市入庁、西区役所で住民基本台帳、戸籍事務に従事。その後、健康福祉局に異動し、福祉医療費システムのホスト分散化対応、後期高齢者医療システムの開発、派遣先の後期高齢者医療広域連合でのマイナンバー制度対応など、各種福祉系システムの業務を20年間担当。2022年に総務局デジタル改革推進課に異動し、現在に至る。

デジタル改革共創プラットフォーム 初代アンバサダーの一人 和歌山市総務局 総務部 デジタル推進課 システム班長の小松亮さん(後列右から2人目)
情報部門に7〜8年在籍し、一度他部署へ。その後2023年に戻り、現在に至る。「長く険しいシステム標準化業務に、明るく楽しく取り組んでいる」と話す。