「デジタル改革共創プラットフォーム」を情報源に、システム標準化を乗り切れるか?(前編)[インタビュー]

「デジタル改革共創プラットフォーム」を情報源に、システム標準化を乗り切れるか?(前編)[インタビュー]

デジタル改革共創プラットフォーム 初代アンバサダーの一人 
名古屋市総務局 行政DX推進部 デジタル改革推進課 課長補佐 高橋広和さん



初代アンバサダーに聞く「デジタル改革共創プラットフォーム」の活用法第2弾。今回は名古屋市総務局 行政DX推進部 デジタル改革推進課 課長補佐 高橋広和さん、和歌山市総務局 総務部 デジタル推進課 システム班長の小松亮さんが登場。
高橋さんはガバメントクラウドに関する知見が深く、積極的な情報共有を続けてきた。「コミュニティの力を糧に自治体全体でシステム標準化の局面を乗り越えようとする気概、他自治体職員からの信頼の厚さ」が、オファーの決め手だったと、デジタル庁の冨岡佳子さんは話す。
小松さんは、自身の業務に関わる内容はもちろん、さまざまなチャンネルで投稿を重ねている。「金曜日には『1週間お疲れさまでした』というコメント、質問への丁寧な回答、時にはクスッと笑えるようなことまで、参加者の皆さんに寄り添ってくださっている」と冨岡さん。
火急の課題であるシステム標準化に携わる2人は、共創プラットフォームから何を得ているのだろうか。

(聞き手:デジタル行政 編集部 手柴史子)

知識・知能の共有

―共創プラットフォームに参加されたきっかけと活用法は?

高橋:システム標準化は、アプリケーションの標準化、ガバメントクラウドへの移行の2つに大きく分かれていますが、クラウド移行を主に担当しています。2022年4月にデジタル改革推進課に配属となり、前任者からの引き継ぎの資料に記載があったため、すぐに共創プラットフォームに参加しました。

実はかなり以前、地方公務員のクローズドコミュニティを運営していたことがあります。2007年から2008年ごろにかけて後期高齢者医療制度改革があり、主に個人のブログで情報発信をしていました。そのブログ記事のコメント欄から交流が始まり、そこからコミュニティができた流れです。その際、こうしたプラットフォームは非常に有効であると実感したので、共創プラットフォームもぜひ積極的に活用していきたいと思ったのです。

これまで特に反響が多かったのは、新しく異動してきた方に対するシステム標準化ガバメントクラウドに関する研修資料の共有です。内部向けに作成したのですが、全国共通で使っていただけるものだからでしょう。


小松:10年ほど情報部門に携わっていますが、間で一度異動になり、2023年4月に戻ってからは、システム標準化、全庁的なシステム費用の精査、契約内容の確認などを担当しています。システム標準化は主要事項で、他自治体がどのように対応しているのか、どう考えているかなどが知りたくて、後輩の勧めで共創プラットフォームの利用を始めました。システム標準化の対象となる業務は20に及びます。基本方針から詳細まで、国から提供される資料は膨大で、理解するのが非常に大変です。一度は目を通していていても、正直頭に入っていないこともあります。また、先行して着手している自治体と後続の自治体では、知識量に大きな差が出ます。共創プラットフォームで先立って検討されている内容を確認し、参考にできることが多々ありました。マイナンバーに詳しい方、高橋さんのようにガバメントクラウドに詳しい方など、それぞれが強いジャンルを持たれているので、自分で調べるよりも投稿して尋ねることが多いですね。

また、上席の方から「同規模の自治体はどうしているの?」とよく聞かれます。そうした際の情報収集としても活用しています。



―他職員の方々の利用状況はいかがでしょう?
高橋:私が所属するデジタル改革推進課は、情報システム部門と DX 部門が合体しているところですが、多くが登録し、利用している状況です。閲覧専門の場合もあれば、積極的に投稿している職員もいます。また、システム標準化20 業務関連の所管課、例えば国保担当課や税務担当課などの職員も少数ながら登録しています。デジタル部門以外の参加も少しずつですが増えているように思います。

システム標準化を進めるにあたって、名古屋市の庁内ではチャットを利用して情報共有をしており、その中でも参加の呼びかけをしています。

小松:和歌山市には現在、約2900人の職員が在籍していますが、登録人数は 45 名ほどです。うち情報部門が 17 名。デジタル推進課は課長以下全員登録しています。

共創プラットフォームには有益な情報が出ていることが多く、職場でシステム標準化やガバメントクラウドを担当しているグループには、定期的に確認するよう促したり、「今疑問に思っている内容が、ちょうど○○市町村さんから出ているよ」など、投稿されている内容を前提とした会話をすることが当たり前になってきています。

ただ、アクティブユーザとそうではないユーザが、明確に分かれてきていると感じています。




―アンバサダーに就任したメリットはありますか?

高橋:講演依頼などの引き合いが多くなり、共創プラットフォームの紹介をする機会も増えました。自分の心構えとしても、コミュニケーションのプロフェッショナルにならねばと、気持ちが引き締まる思いです。

1月初旬にデッカイギ(行政デジタル改革共創会議)というイベントがあり、15人中12人のアンバサダーが集合し、セッションを行いました。また1月の中旬には名古屋で共創プラットフォームの勉強会「共創PFキャンプin東海」を開催し、東海地方を中心にアンバサダーをはじめ、共創プラットフォームユーザーが集まって交流することができました。

小松:共創プラットフォームの活用を広げていくという目標は同じですが、アプローチの仕方は、アンバサダーごとに違います。自分にはない発想に触れた時、アンバサダーになって良かったなと実感しています。ミーティングで集まる機会もあるので、各自の得意分野から学ぶことも多いです。うまいファシリテーションなど、自分の知識につながっています。

共創プラットフォームにはダイレクトメール機能があり、直接個人的に相談を持ちかけられることも増えました。共創プラットフォームでは、ダイレクトメールではなくチャンネル上での会話を推奨していることもあるのと、もしかしたら他の人も悩んでいる内容かもしれないと感じたら、プラットフォームへの投稿を促すこともあります。

「共創PFキャンプin東海」の集合写真

悩みや課題への共感

―共創プラットフォームではどのようなコミュニケーションが展開されていますか?

高橋:ガバメントクラウドのチャンネルによく投稿していますが、他の方からの質問も非常に多いんです。回答するにはやはりいい加減には返せないので、しっかり調べてから答えるようにしています。調べることで自分の知識の再確認にもなるし、改めて気づくこともあります。システム標準化を進める上で注意しなければならない点が明らかになり、庁内で周知することもありましたね。

小松:具体的な業務に関する質問や悩みごとに対し、他自治体の職員が意見を伝えるといった場面をよく目にします。システム標準化では、2025年度の補助金の申請期限が間近に迫っています。ここ2週間(取材日は2025年1月28日)ほどは、補助金の対象か対象外か、申請の際の様式の書き方についての投稿が多いです。「自分のところはこうしているよ」「この資料に記載があったよ」などのやり取りをしたり、質問や回答内容を引用したりしながら、助け合っています。

私としては、自分の中にすでに結論はあっても、その再確認や、違う切り口でのやり方を知りたい時に、あえて投稿に載せたりすることがあります。最近「ガバメントクラウドに関するある部分の料金が事業者によってバラバラなのは見込みのやり方が異なるからで、それについてどうお考えですか?」と投げかけたら、いの一番に高橋さんが応じてくれました。

(後編へ続く)



◼️アンバサダープロフィール

名古屋市総務局 行政DX推進部 デジタル改革推進課 課長補佐 高橋広和さん

1998年名古屋市入庁、西区役所で住民基本台帳、戸籍事務に従事。その後、健康福祉局に異動し、福祉医療費システムのホスト分散化対応、後期高齢者医療システムの開発、派遣先の後期高齢者医療広域連合でのマイナンバー制度対応など、各種福祉系システムの業務を20年間担当。2022年に総務局デジタル改革推進課に異動し、現在に至る。



デジタル改革共創プラットフォーム 初代アンバサダーの一人 和歌山市総務局 総務部 デジタル推進課 システム班長の小松亮さん(後列右から2人目)

情報部門に7〜8年在籍し、一度他部署へ。その後2023年に戻り、現在に至る。「長く険しいシステム標準化業務に、明るく楽しく取り組んでいる」と話す。