全国初! 全部署にSMS配信システムを導入
三原市の情報伝達デジタル化の取り組み[インタビュー]
中国・四国地方のほぼ中央に位置する人口約9万人のまち・三原市が、全国初となる全部署SMS配信システムを導入した。前日リマインド通知など、従来の郵送システムでは難しかったスピーディーかつ個別に情報を発信できるこの取り組みの詳細について、デジタル化戦略課の池本さん・森さんのお二人にお話を伺った。
(聞き手:デジタル行政 編集部 町田 貢輝)
情報を個別に配信し行政サービスの向上を目指す
――デジタル化戦略課の業務内容を教えてください。
私たちは、市役所全体でデジタルツールを活用した業務改革を進めています。電子申請の導入や、オープンデータの作成と公開、今回取材していただくSMS配信システムの導入なども、私たちの業務の一つです。
また、デジタルデバイドという課題に対応するため、高齢者やスマートフォンが使えない方向けに、スマートフォン教室などのデジタル活用支援も行っています。
さらに、行政や地域の課題解決のために、最新のデジタルサービスや技術を活用した、新しい取り組みの実証実験も行っています。三原市ではデジタル化による業務の効率化や市民サービスの向上を図っています。
デジタル化戦略課の池本さん(左側)、森さん(右側)。
――SMS配信システムとはどのようなものなのか、また導入した理由を教えてください。
SMSを利用して、複数の方はもちろんのこと、特定の個人に必要な情報を配信するシステムです。
三原市ではこれまで、個別通知では郵便や電話、広く周知する場合はホームページや公式LINEを市民の皆様への情報伝達手段として使用してきました。
しかし、ライフスタイルの多様化や情報受け取りのニーズの変化により、即時性や受け取りの確実性が求められるようになった現代では、今までの方法だけでなく、新しい情報伝達手段が必要と考え、今回即時性と市民の皆様のスマートフォンに直接情報をお送りできるSMS配信システムを導入しました。
――SMS配信システムの導入によってどのような効果がありましたか。
まだ導入したばかりで、具体的なデータはありませんが、SMS配信システムの導入により、情報伝達の迅速化と効率化が図られたと考えています。
普段、市からの個別連絡には郵便を使用していますが、例えば、イベントの変更通知や急な連絡が必要で、郵便では間に合わない時は、電話にて市民の皆様にお知らせしていました。
しかし、職員一人で数十件もの電話を掛けることは、大変な業務負担です。これがSMS配信システムにより解消されることは、大きな効果だと感じています。
――SMS配信の頻度を教えてください。
令和5年11月から利用を開始し、令和6年3月までの累計で、24部署から合計約6000通を配信しました。
最も多いのは前日リマインド通知で、健診や確定申告相談会の予約日の前日に日時などを改めて通知しています。その他には福祉サービス利用者への事業利用勧奨の連絡を行っています。
――市民の皆様からの反響を教えてください。
これまで約6000通のメッセージを、市民の皆様にお送りしましたが、今のところ苦情などの連絡はありません。
例えば、窓口予約等をした方からは「『明日の13時に窓口予約をしています』とSMSがきたので、忘れずに来れました」との言葉をいただきました。市民の皆様にも好意的に受け止められていると思います。
――個人を特定して配信しているとのことですが、どのような方法で個人を特定しているのでしょうか。
市役所への届出や、イベントの申込みに記載された電話番号を、事前に本人の承諾を得た上で利用しています。そのため、市民の皆様に特別な登録などの作業をしていただくことなく、必要な情報を送ることができます。
個人も複数の方にも費用を抑えながら情報を送信できるのがSMSの強み。
特別な講習がなくても使用できると職員からも好評
――全部署でSMS配信の体制を整えたのは、三原市が全国初だそうです。各課を横断するシステムを導入する上で重要視したことはなんですか。
全ての部署に導入するにあたり、送信元の電話番号を、部署ごとに設定できることを重要視しました。
部署ごとの電話番号でメッセージを送ることができれば、受け取った市民の皆様が、その電話番号を検索すると、本当に市役所からのメールなのかどうか判断できるからです。ショートメッセージは便利ですが、詐欺メールなどが届く問題もありますので、どの部署が送ったのかまでわかる本システムであれば、市民の皆様も安心して使っていただけると考えています。
送信元の伝電話番号を部署ごとに設定できたことは、今回契約した株式会社ネクスウェイの提案がきっかけでした。三原市では現在、株式会社ネクスウェイのSMSLINKというシステムを利用しています。
当初は、福祉部門、税部門、その他の部門という3つの区分で電話番号を設定し、SMS配信を行うことを考えていましたが、SMSLINKでは、費用負担なしで全部署分の送信元電話番号が設定できたので、コストを抑えながら、全部署導入を実現できました。
――SMS配信を行う際、気をつけていることはありますか。
特に気をつけていることは、正しい携帯電話番号にメッセージを送ることです。携帯電話番号の変更や契約変更により、過去に使われていた番号を再使用する場合があります。
また、家族間で電話機やSIMカードを交換することも考えられます。そのため、送信する際には市が把握している本人ではない他人が番号を持っている可能性も考慮し、慎重に送信しています。
さらに、先ほど述べた通り、SMSは詐欺メールなどが届くこともありますので、送信する際は、詐欺メールなどに誤解されないようにするため、文章を工夫しながら市民の皆様へメッセージをお送りしています。
――SMS配信システムに対する職員の反響を教えてください。
SMSという誰もが一度は使用したことがあるシステムのため、職員からも利用しやすいと好評です。
SMS配信を行う文章も各課の担当職員が作成し、配信までを行っています。
特別な研修や教育はなくても、システム操作に関する質問はほぼありませんでしたので、利用しやすいシステムを導入できたと考えています。
各担当課の電話番号で届くため、発信元の確認が簡単にできる。
――SMS配信システムを導入したことにより、郵便コストの削減はできましたか。
導入して間もないシステムのため、現在は郵送とSMSによる連絡を併用しています。市からのお知らせを完全にSMS配信システムに置き換えられていないのが実情です。
今後利用していきながら、徐々に郵便の割合を減らしていき、郵便コストの削減も目指していきたいと考えています。
――今後、SMS配信システムで行っていきたい業務を教えてください。
税金や料金の徴収事務や督促などの利用、また災害時の連絡手段としての活用を考えています。
特に町内会の役員や自主防災会などの組織への連絡でも活用できると考えています。
――災害時は、素早い情報伝達が重要ですので、SMS配信は非常に役立つと思います。
そうですね。災害時にはホームページをゆっくり確認することは難しいと思いますので、SMSで情報をお送りすることは非常に有効だと考えています。
また、普段からSMS配信を行っていれば、特別なことをしなくても、市民の皆様にスムーズに連絡をすることができますので、非常時以外でもSMS配信システムを活用していきたいです。
――最後に三原市で進めているデジタル化の取り組みを教えてください。
三原市は、マイナンバーカードを活用した医療DX(予防接種事務)の先行実施自治体に、中国地方で唯一選ばれ、業務の開始に向けて準備しています。
令和2年に岡田吉弘市長が就任した時、三原市はデジタルファーストという方針を立てました。そのため、職員たちもデジタル化に対する意識を高く持つように心がけており、日々の業務をデジタルツールの使用で改善・効率化ができないかを考え、新しいことに挑戦できる風土が少しずつ整ってきたと考えています。今後も市民の皆様の利便性を向上させるために、デジタル化を進めていきます。