自治体のeギフト活用を支える「giftee for Business」―ギフティが手掛ける2つの自治体向けサービス[インタビュー後編]

自治体のeギフト活用を支える「giftee for Business」―ギフティが手掛ける2つの自治体向けサービス[インタビュー後編]

株式会社ギフティへのインタビュー前編では、自治体内で経済を循環させる「e街プラットフォーム」を紹介した。これだけに留まらずギフティでは、自治体から市民に対してのeギフト給付をサポートする「giftee for Business」も提供している。

少子化、福祉、環境問題と先が見えない社会課題に対し、「自治体の施策に合わせたサービス提供が可能」というgiftee for Businessの全容について、株式会社ギフティ 第三事業本部 Gift Distribution BusinessGrowth Unit2 マネージャー 渡邉 康人氏にお話を伺った。

(聞き手:デジタル行政 渡辺 龍)

前編はこちら

地域に縛られないeギフトで市民をサポート

―giftee for Businessの自治体向けサービスの概要についてご紹介ください

giftee for Businessというサービス自体は「for Business」という名前の通り、主に法人様を対象にeギフトを流通させるサービスです。例えばアンケートに答えてくれたエンドユーザー向けに今までは紙の商品券を配っていた法人様も多いかと思いますが、それをeギフトに置き換えていくといったところからビジネスがスタートしています。本サービスを活用いただければ自治体様の場合も同様に、市民の皆様に、全国展開されているカフェやコンビニ、飲食店で利用できるeギフトをお渡ししていくことが可能になります。

具体的な活用事例としては、例えばゴミ拾いなどのボランティア活動をした市民の方にポイントを付与し、それをeギフトに交換できるといったものがあります。中でも最近のトレンドになっているのはこども家庭庁が推進している出産子育て応援事業に関してのもので、各自治体様が市民の方に給付をする中で、現金ではなくeギフトで実施するといったケースも見られます。

―e街プラットフォームでもお店で使える電子商品券などを発行していますが、市民からすると似たようなものになるのでしょうか

e街プラットフォームは特定地域内での利用が基本となっているのに対し、giftee for Businessが提供するeギフトは地域の利用の制限がなく全国どこでも利用できます。全国チェーンのコンビニやカフェ、アパレルショップ、ECなど、活用シーンを幅広く取り揃えているので様々なニーズに応えることができます。

例えば里帰り出産をした際に、子育て支援としてその地域でしか使えないeギフトを貰ってしまうと、いざ里帰り先から自宅へ戻った際に使えないということになります。そういったケースにも対応できるように利便性を優先して、地域の制約は緩めています。なのでgiftee for Businessの自治体様向けソリューションは、市民の方への用途を絞った給付を一番の目的にしており、e街プラットフォームは地域の経済的支援を主眼としています。

―なぜ自治体向けにもサービスを展開していくことになったのでしょうか

「giftee Box」というパッケージサービスをリリースしたことが大きな起点となりました。これはeギフトをカタログ化したもので、約1,000種類のラインナップから好きな商品を選ぶことができるサービスです。単品ギフトと異なり決められた上限金額の中で受け取った方が自由にギフトを交換することができます。

自治体様としては市民の方の多様なニーズに応える必要があり、かつ特定企業に対する利益供与を避け、公平性を担保しなくてはなりません。このサービスをリリースして民間企業での成果が出てきたところで、安定して自治体様に向けても提供ができるようになったということで取り組みを始めました。

―導入はどの程度進んでいるのでしょうか

2023年1月に本格ローンチをして、現在約20自治体様に導入いただいています。子育て支援に関しては多くの自治体様で一律で何かしら取り組んでおり、その9割以上が現金給付となっています。その中でデジタル化の推進に力を入れているような自治体様からは引き合いを早めにいただいている状況です。現在では徐々に現金からeギフトへ切り替えていくニーズが伝播しているという感触があります。

現金には無いeギフトの強み

―「eギフトのニーズ」ということですが、自治体としては交付金として現金給付のみでは不十分なのでしょうか

いくつか理由はあるのですが、現金だと受け取った市民の方が給付の目的とは異なる用途で使ってしまう可能性や、タンス貯金に回り経済的な循環に繋がりづらいという構造があります。

eギフトはある程度利用用途が限られていることできちんと本来の目的に使ってもらい、有効期限という現金にはない概念を入れることで一定の経済的な効果も見込めます。どちらにも一長一短ありますが、これらの観点からeギフトの給付が徐々に進んできています。

―自治体の導入目的としては子育て支援での活用が多いのでしょうか

主に3つの施策で活用されていて、1つが子育て支援、2つ目がマイナンバーカードの取得や利活用促進に係る取り組み、3つ目が省エネ家電の購入促進事業です。

マイナンバーカードでは、カードを取得された市民の方に利活用を推進するため、電子申請をした方にポイントを付与するといったものです。また、省エネ家電の購入促進事業については、エコ家電の購入金額の数%をキャッシュバックするというキャンペーンになります。2022年からのエネルギー高や脱炭素などを背景にしながら、主に環境系の部署で取り組まれています。

―国の動きや社会課題と連動して導入が拡大されているということですね

おっしゃる通りで、行政では社会課題を解決するための施策をその都度講じています。求められることはその時々によって異なるので、自治体様からすると民間企業をパートナーに迎えようとしたときに、規格化されたサービスを提供している企業とは連携が難しくなります。

当社としても課題に合わせて提供できるギフトのソリューションは柔軟に変えていきながら適切なサービスを提供することを考えています。現状では先ほどの3つが取り扱い数としては多いのですが、まだ小さいご相談でいうと結婚組数増加の支援や、高齢者、妊産婦、障がい者の方の移動支援などもあります。ここに対しても今後は形を変えながら対応していくことを考えています。

eギフト会社の枠を超えた包括的な支援

―導入自治体の中で特徴的な取り組み事例はありますか

島根県江津市様の子育て支援策をサポートした際には、現物ギフトとeギフトを組み合わせたオリジナルギフトボックスを提供しました。

元々は従来通りeギフトの引き合いをいただいたのですが、話し合いの中でフィンランドのベビーボックス(*1)制度の話題になり、ギフティでも現物ギフトの提供は可能かというお話になりました。ちょうど、2022年10月よりCorporate Giftサービスの一環として、現物ギフトも取り扱うというチャレンジをしていたこともあり、最終的に現物とデジタルの両面から商品を提供することで、市民の方を包括的に支援できるのではないかというお話になりました。

(*1) 子どもの生まれた家庭に贈られる育児⽤品の詰め合わせボックス

資料提供:株式会社ギフティ

―画一的なサービスを推し進めるのではなく、コンサル的な視点からも柔軟に自治体をサポートしているという印象です

コンサルと言ってしまうとおこがましいのですが、状況をお伺いしながら何を実現できれば市民の方にとっていいのか、また自治体様の業務負荷を減らせるかといった観点からもお話しをさせていただくケースが多いです。

というのも、特定の領域しかカバーしていないと、自治体様が複数の企業とやり取りをしていくことになり、業務負荷の増大に繋がります。我々としては様々なパートナーさんとも連携することでサービスの提供幅を広げていくことが大事だと思っています。 この領域は競合が多く、カタログギフトの会社さんなどは古くからやられています。

ただ、コンテンツを提供するだけでなく、当社のように周辺のシステムや事務局機能、効果測定まで一気通貫で取り組んでいるのは珍しいと思います。例えば当社では印刷・郵送物も一緒に手配したり、市民の方からのお問い合わせ窓口としてコールセンター事業も引き受けています。私たちはeギフト会社ですが、自治体様の事業全体を上手く運営するための総合提案を進めながらお力添えできればと思っています。