デジタルを活用して安心を届けたい
― メドレー、ドコモ、NTT Com、福井県へシステム提供 -前編- [インタビュー]
「陽性者・接触者サポートセンター」の開設とビデオ通話利用
令和4年1月、福井県は新型コロナウイルス感染症の自宅療養者への健康観察業務を担う「陽性者・接触者サポートセンター」を開設した。従来は各保健所で健康観察を行っていたが、開設後は当センターが一括して実施する。
センターでは看護師、保健険師、事務職員等約20名の体制で自宅待機者等の健康観察が行われる。特徴は「新型コロナ療養者向けオンライン診療システム」と呼ばれるビデオ通話が用いられることだ。健康観察にビデオ通話を用いた背景について、同県健康福祉部健康予防課の担当者は以下のように話す。
状態に不安があるときに、画面を通して体調を把握したり相談ができるツールがあることは、療養者様が安心して療養期間を過ごしていただくことにつながると考えました。
同システムはNTTグループ・メドレーにより提供されている。令和3年3月、福井県は5G、IoT、ビッグデータ、AI等に代表されるデジタル技術で地方創生を促進することを目的に、株式会社NTTドコモ(以下、NTTドコモ)との間に「福井県のDX(デジタル・トランスフォーメーション)の推進に関する連携協定」を締結。県民生活や産業、人材育成など、幅広い分野で連携するとした。
第6波に向けて、健康観察業務のデジタル化を検討していた際に、NTTドコモから同システムの紹介があった。導入・保守を担う株式会社メドレーからシステムについて説明を受け、試用してみると操作方法がわかりやすい。すぐに利用開始できると判断し導入を決めたという。ビデオ通話でのメリットは何か。
看護師や職員から療養者様の顔色や状態等が確認でき、安心感があります。また、ビデオ通話の場合は一人の療養者様に対して複数名で対応できることも大きなメリットです。県民の方々からも「対面のため安心できる」というお声をいただいています。(保健予防課担当者)
コロナ対応だけではない、福井県のデジタル化施策
福井県のデジタル化への取り組みはコロナに終わらない。令和3年4月には、知事を本部長とした「福井県DX推進本部」を設置。県の政策をDXの視点で整理した「福井県DX推進プログラムver.2.0」では「生活DX」「産業DX」「行政DX」と3つの分野にまたがる計68事業が提案される。DXに向けて職員側の体制も整備されているという。
全所属から1名以上の「DXリーダー」を選出し、ボトムアップからDXを推進しています。DXリーダーはWeb講座などの受講を通して、デジタルリテラシーを身につけ、各課業務の業務効率化や新たな価値創造を進める役割を担います。「みずから考える、みんなで変える、ふくいを変える」を合言葉に全庁挙げてDX推進に取り組んでいます。(保健予防課担当者)
新型コロナウイルス感染症は世界中の健康や経済に大きなダメージを与えた。一方で、皮肉にもコロナが組織や個人にとって何が重要かを思い出す契機にもなったのではないか。企業や自治体にとって大切なことは、社会に貢献するために変化を恐れないこと。組織改編や新システムの導入にはリスクが付きまとうが、これを恐れれば大きな社会変化への対応はできない。福井県の展開するデジタル化を伴う組織改編は、コロナという困難に真摯に向き合う県の姿勢の表れと言えるだろう。
(聞き手:デジタル行政 編集部 横山 優二)