府中町、包括的な子育て支援のDX化を開始[ニュース]
住民に対する包括的な子育て支援「ネウボラふちゅう」を実施している広島県府中町は、両備システムズが開発した子育て支援システム「ネウボラかるて」を導入し、全国で初めてタブレットで母子保健業務があらゆる場所で可能となるシステムとして、稼働を開始した。
「ネウボラ」とは、フィンランド語で「相談の場所」を意味する言葉であり、フィンランドで導入されている、妊娠した女性が出産し、子どもが一定の年齢に成長するまでをワンストップで導入されている支援制度である。
日本では、2016 年に閣議決定された「ニッポン一億総活躍プラン」の中で、妊娠から出産および子育て期に切れ目のない支援を行う場として、2017 年 4 月から、「子育て世代包括支援センター」の設置が努力義務となり、2020 年度末を目標に全国の市区町村に広がった。
広島県では、2017 年(平成 29 年度)から子供と家庭に関する切れ目のない見守り・サポート体制である「ひろしま版ネウボラ」の構築を進めており、府中町は2018 年(平成 30 年度)からそのモデル市町としてモデル的な取組を実施している。
その取り組みとは、母子健康手帳交付時、赤ちゃん訪問(生後2か月頃)、4か月児広場、1歳6か月児健診、3歳児健診の、計5回に及ぶ定期面談や、妊娠中期に2回、0歳期に3回の定期面談や他施設での健康相談、産後ケア事業を新設することで、妊娠中から保健師等の専門職による切れ目のない支援を行い、子育て家庭との信頼関係を構築するとともに、子育て家庭の不安感が軽減することにより、地域で安心して妊娠・出産・子育てができることを目指したものである。
だが、これらの業務では紙カルテが使われており、事業拡充にともない業務効率の面で課題が生じていた。
また府中町では、広島県のモデル事業として、福祉、母子保健、教育などのデータを連携し、AI を活用してデータを分析し、児童虐待などのリスク予測を行い、予防的に支援を行う「子供の予防的支援構築事業」を行っており、母子保健業務のデジタル化が必要とされていた。
「ネウボラかるて」の導入により、住民は、申請や予約をスマートフォンなどで行うことが出来、自治体職員は、セキュリティを確保した通信環境でのタブレットを使用し、健診結果・面談結果などの経緯を踏まえた面談を、あらゆる場所で実施することが可能となる。
また、専用のタブレット端末から、訪問先や健診会場など、これまで健康管理システムを使用できなかった場所においても情報照会や入力が出来るようになり、情報セキュリティーを担保した環境で、自治体職員の業務効率を改善することが可能となる。
両備システムズが2021年7月に提供を開始した「ネウボラかるて」は、妊娠から出産、子育て期までの住民の皆様に対し、自治体が行う”切れ目のない支援”の実現に向けた取組を包括的にサポートする子育て支援システムである。
全国約 700 団体に及ぶ自治体へ導入実績のある同社の健康管理システム「健康かるて V7」をベースシステムとし、顔認証など多要素認証によるセキュリティソリューション「ARCACLAVIS」を採用。タブレットから同社データセンター「Ryobi-IDC」へアクセス可能な閉域環境を構築するなど、利便性とセキュリティを兼ね備えている。
(執筆:デジタル行政 編集部 野下 智之)