釧路市、ノーコードツールを活用し市民の利便向上と職員の負担軽減を実現-住民票・所得証明書等の郵送請求のオンライン化への実践【インタビュー】

釧路市、ノーコードツールを活用し市民の利便向上と職員の負担軽減を実現-住民票・所得証明書等の郵送請求のオンライン化への実践【インタビュー】

市民税課税務係 後藤さん(左)、戸籍住民課戸籍住民担当 豊巻さん(右)

近年、自治体でもデジタル技術やデータの活用による市民サービスの向上や、業務効率化による行政サービスの向上が求められる中、手段の一つとしてノーコードツールを活用し内製化を進めながらDXを推進する自治体が急速に増えつつある。
釧路市は、令和4年度に自治体専用電子申請ツール「LoGoフォーム」を導入し、紙業務や申請手続きのオンライン化を進めている。同市の財政部市民税課と市民環境部戸籍住民課では、所得(課税)証明書及び住民票等の郵送請求のオンライン化を実現。同時に、申請に伴う個人認証、及び郵送料の決済手続きもオンラインで完結するよう、マイナンバーカードの署名電子証明書による個人認証、クレジットカードあるいはPayPayによる電子決済ができる仕組みを構築した。これにより、従来、申請者が申請してから証明書が届くまで1週間ほどかかっていた所要日数をおおむね半減にすることができたという。また、職員の業務負担も軽減し、双方に大きな効果を生み出している。
今回は、開発担当者である、税務係後藤さんと、戸籍住民担当の豊巻さん、そして情報システム課DX推進係の河面さんの、3人にお話を伺った。


(聞き手:新井 なつき)

-今回、住民票、所得(課税)証明書に係る郵送請求のオンライン化に取り組まれた経緯について、お聞かせ下さい。

後藤氏:情報システム課からお声をかけていただいて、オンライン申請のフォーム作成を開始しました。私は、所得(課税)証明書の申請受付・発行業務を担当しています。当初、市外のお客様が所得(課税)証明書を申請する手段には、紙ベースの郵送請求しかありませんでした。従来の手続きでは、時間と労力がかかり、市民の皆さまや職員にとって不便だと感じており、市民の利便性向上と職員の業務効率化を目指して開発することにしました。

豊巻氏:私も同じく、業務改善と利便性向上を目的に、オンライン申請フォームを作成することに決めました。

-申請フォームを作成するなかで、工夫された点や気を付けた点はありますか。

後藤氏:他自治体の課税証明書のフォームを参考しながら、当市用に適したフォームを作成しました。質問内容を全表示するのではなく、回答内容に応じて次の質問が表示される計算式を組み、申請者の方が簡単に申請できるように工夫しました。
これまで課税証明書を郵送請求する場合、書類と返送用封筒を用意するだけでなく、郵便局で定額小為替を購入したり、申請書を印刷したりするなど、申請者に負担がかかっていました。また、職員側では、収入の有無を電話で確認したり、申請書に不備がある場合に問い合わせしたりすることもありました。これらの業務を全てLoGoフォームの質問内容に集約することで、職員の負担を軽減できるように工夫しました。

豊巻氏:戸籍住民課で取り扱う証明の一例として、住民票の申請には、ご本人分だけ申請するケースや、家族も含めた全員分を申請するケースがあります。申請内容を問わず、申請フォームに質問を一覧化してしまうと、申請者に混乱を招く可能性がありました。そのため、一人分の申請なのか、或いは世帯全員の申請なのかという質問を冒頭に加え、回答内容に応じて次の質問を変えるように工夫しました。

-申請フォームを作成するなかで、大変だったことや、工夫されことはありますか。

後藤氏:LoGoフォームで初めて申請フォームを作成するときに、Javascriptというプログラミング言語が使われており、当初、全く理解できませんでした。他の課の方に聞きたいと思っていましたが、同じようにオンライン申請を行っている課が無かったので、自力で条件式の理解と当市用のカスタマイズを行ったため、かなり時間がかかりました。
特に強調したいのが、通常業務と並行してフォームの作成を行っているということです。そのなかで、周囲の同僚にサポートしていただきながら完成することができました。課の皆さんに大変感謝しています。

河面氏:DXやデジタル化は、業務を楽にするためのものではありますが、担当する職員にとっては、検討や作業のため一時的に業務量が増えます。現在、地方自治体でも人手不足が叫ばれているなかで、その時間をどのように捻出していくのかが、カギになると考えています。
今回の取組は、改善に係る担当者の負担を、課内でサポートしたという点でも好事例だと感じています。

豊巻氏:私は、LoGoフォームのテンプレートを基に、フォームを作成したため構築までにさほど時間はかかりませんでした。ただ、その後に発生する業務フローと、従来の紙請求によるそれとのギャップを埋めるのに苦労しました。従来の業務では、紙の申請内容をもとに証明書を発行し郵送しますが、オンライン申請の場合は職員がLoGoフォームの回答内容を申請書の形式に落とし込んで作成しなければなりません。申請データをダウンロードして、従来の申請書の形式に合わせてデータを逐一抽出するとなると、作業が属人化してしまう可能性がありました。そのため、どの職員でも一連のフローが簡単にできるよう、ダウンロードした申請データをそのまま貼り付ければ自動的に整理され申請書が作成できるExcelを作成しました。
その作業の中で大変だったのが、データの取捨選択です。回答内容のデータには申請書作成に必要なデータと必要でないものが混在しています。ダウンロードデータは基本的にCSV形式で出力され、申請日もばらばらなので、日付を入力することで該当日の申請データのみを抽出できる計算式を組みました。また、申請データには管理番号を振っているので、管理番号を打ち込めば簡単に申請データが呼び出されるよう仕組み化しています。
準備段階ではExcelや運用マニュアル等、「作る」作業はたくさんありましたが、運用開始後に可能な限り手順が少なく済ませられるように努めました。

-オンライン申請を運用してから業務の変化や市民からの反響はありましたか。

後藤氏:申請者への電話確認が不要になったことで、職員の負担が軽減されました。
市民の皆さまからの反響としては、「手続きが簡単になった」、「対応が早くなった」など肯定的な反響を多く頂いております。また、24時間の申請が可能になったこと、手数料の定額小為替を購入する手間が無くなったことにより、郵送請求に係る所要日数が平均1週間から約半分になったという声もあり、喜ばれていると感じています。

-今後の目標や展望について、お聞かせ下さい。

豊巻氏:まず、10月の郵送料改定に合わせて申請フォームを改修していくことです。加えて、LoGoフォームを操作できる職員は課内に私しかいないので、私のほかに操作できる職員を育成していく必要があると考えています。私が不在のときや急用のトラブルがあったときに対処できる人材は重要です。

後藤氏:私も豊巻さんとまったく一緒で、市民の皆さまからの問い合わせやトラブル対応を迅速に行うため、また人事異動に備えるため、7月から課内の業務分担変更を行い、LoGoフォームを操作可能な職員を増やしていきたいと考えています。
また、現在、8種類ある証明書のうち1種類のみオンライン申請ができています。今後、その他の証明書もオンライン申請ができる仕組みを整えていきたいと思っています。ただ、作業時間をいかに確保するのが課題です。