ノーコード宣言シティー第1次宣言自治体。ツール導入後間もない、静岡県伊豆市が試みる内製化の進め方とは:実感し始めた業務改革の効果と職員の意識変化[インタビュー]

ノーコード宣言シティー第1次宣言自治体。ツール導入後間もない、静岡県伊豆市が試みる内製化の進め方とは:実感し始めた業務改革の効果と職員の意識変化[インタビュー]

静岡県東部、伊豆半島の中央に位置し、全国的に有名な修善寺温泉をはじめ、観光地として知られる伊豆市は、 2023年5月にノーコード推進協会が主導するプログラム「ノーコード宣言シティー」に参画した。同年秋にサイボウズ株式会社のkintoneを導入し、ツールを活用した業務改革と職員の意識改革を進めてきたという。今回は、ノーコード宣言シティーに参画した経緯から、その後、具体的にどのような取組を実施し、何に注力してきたのかを中心に、地域づくり課デジタル戦略スタッフの関野さんにお話を伺った。

(聞き手:新井 なつき)

-伊豆市のデジタル戦略についてご紹介ください。

伊豆市は、2004年に修善寺町、中伊豆町、土肥町、天城湯ケ島町が合併して誕生し、今年で20周年を迎えます。
令和4(2022)年度3月に「伊豆市DX(デジタル・トランスフォーメーション)推進方針」を作成し、市民サービスの利便性向上や行政運営の生産性向上、デジタル社会を実現するための環境整備を基本理念としています。令和5(2023)年度にはDX推進方針に基づく詳細な計画を策定し全庁的にDXに取り組んでいます。
地域づくり課デジタル戦略スタッフの業務は、DX推進方針並びに詳細計画の取りまとめや各課の進捗状況の管理・確認、ノーコードツールをはじめとしたデジタルツールの導入等の内部業務と、デジタルデバイドの解消を目的にスマホ教室のような市民向けの相談等の外部業務を担当しています。加えて、PC導入・管理を担う電算部署も担当しています。

-今回、「ノーコード宣言シティー」に参画した経緯について、お聞かせ下さい。

当市のCIO補佐官が「ノーコード推進協会」との繋がりがあり、ノーコード宣言シティープログラムについて紹介いただいたのが、参画へのきっかけになります。

-kintoneの導入経緯についてお聞かせください。

当時のCIOから提案いただいたのがきっかけになります。kintoneは汎用性も高く、データベースとして使えることから、当市のDXを進めるうえで重要なツールになっていくだろうと想定し選定しました。
昨年度からkintoneを導入しており、デジタル戦略スタッフと、主に各部署の推進DXリーダーにライセンスを付与しています。今年度はより拡充してライセンス数を増やしていきたいと考えています。

-どのような体制でアプリ・システムを開発していますか。

アプリ開発は業務担当課が担当し、デジタル戦略スタッフがサポートに入る伴走支援型で行っています。デジタルツールを導入することによる業務フローの見直しや、アプリの開発計画について原課から提案を受けたうえで、テクニカルな相談があればデジタル戦略スタッフがサポートに入ります。

-具体的にどのような業務でkintoneを活用していますか。

自転車購入補助金の申請で活用しています。当市は、東京2020大会自転車競技開催地として、自転車に関するレガシーの創出と市民の健康増進に繋げるため、自転車利用を促進することを目的として、新車の自転車等を購入する場合に補助金を交付しています。これまで紙の申請書で受け付けてきましたが、kintone上でフォームを作成し、オンラインで申請できる仕組みを整えました。
また、事業者より伊豆市内の観光施設等をロケ地として撮影の依頼をいただくことが多くあります。そのため、ロケ撮影等の許可申請や管理業務などもkintone上で管理しています。
今後は、市民の申請サービスや窓口業務などの外部業務でも活用していきたいと考えています。

-どのような業務フローで開発を進めていますか。

昨年度は、業務担当課からの相談を個別に受けて開発支援を進めてきましたが、徐々に相談件数も増え、現状の体制では対応しきれなくなりつつあります。そのため、文書法規の担当課に確認しながら、デジタル戦略スタッフでどの業務にkintoneを活用できるかを検討しつつ、定期的にkintoneの専用相談会を設けることで対応していきたいと考えています。また、アカウントの有無に関わらず、業務効率化やペーパーレス化などの観点から、業務フローを見直していくマインドを醸成するために今年度から全庁的な研修を開催できたらと検討しています。

-アプリ・システム開発の中で、大変だったことや気を付けていることなどはありますか。

私たちもノーコードやローコード的な考え方や知識が持っていなかったので習得するのになかなか苦労することもあります。ノーコード宣言シティーに参画してから、サポートに入ったり、研修会、セミナーを開催したりするなど、職員自らどのような業務にkintoneを使えるのか考えるきっかけづくりに努めていますが、職員の方々に伝わらない部分もあり苦労しています。一方で、各課の開発担当者は、通常業務のなかで時間を割いて、アプリ開発等を行わなければならないので苦労していると思います。

-職員の意識改革につなげるために、積極的にコミュニケーションを取っていらっしゃるかと思います。具体的なエピソードはありますか。

昨年度のkintone導入以降、庁内でどのように横展開していけばよいのか検討してきました。そのなか、若手職員が有志で集まったグループがあり、彼らが中心となってアプリ開発を行った取組を庁内で発表してらう機会がありました。それを機に、「kintoneで何か作ってみようか」と意識する職員が増えてきたかなと感じています。
また、定期的に各課へのヒアリングを行っていますが、業務アプリ開発に関する相談が少しずつ増えてきています。今後は、どのように相談に応えていくのかが重要です。対応策の一つとして、月一回ほど業務時間内にアプリを作る時間を設けたいと考えています。

-アプリ・システム開発の中により、業務の変化や市民からの反響はありましたか。

市民の方の入力から帳票の出力までをkintoneやプラグイン機能を活用して対応できる環境は整っているので、業務の時間短縮に繋がったという声は聞いています。大変ありがたいです。実際、今年度の自転車購入補助金の申込者のうち、約7割がオンライン申請で申し込んでいます。
職員と市民双方がより楽に迅速に利用できるようになるので、ツールを活用することで職員の業務改善や市民サービスの利便性向上につながっているのかなと実感し始めているところです。

-今後の展望・目標についてお聞かせ下さい。

全職員がWordやExcelと同じように気軽に業務で使えるツールになるように体制や環境を作っていきたいです。
また、市役所外の取組として、市民の方にノーコードツールについて知ってもらいたいという想いがあります。事業者の皆様やノーコード推進協会の方々と協力しながら、セミナーなどのイベント等を開催し、多くの方に知ってもらうことで、職員が「もっと頑張ろう」と思えるきっかけに繋がるよう取り組んでいきたいです。
また、ノーコードツール事業者の皆様に当市の取組を発信し、ノーコードツールの使い道を知ってもらうことで、ノーコードが伊豆市内全体のDXの一端を支える存在になることができればと考えています。