青梅市の目指す“スマートローカル”―「DX推進課」による全庁的なDX推進とは―[インタビュー後編]
東京都青梅市のお話を聞く全2回のインタビュー。
シリーズ後編ではDX推進の風土づくりに向けた取り組みや今後の展望について取り上げる。
(聞き手:デジタル行政 編集部 柏 海)
※ 前編はこちら(URL)。
DX推進に特化した課を新たに設置
―青梅市におけるDX推進課とは、どのような組織なのでしょうか。
DX推進課 令和4年度に 「スマートローカル青梅」を策定した際には、まずは準備期間という形で、企画部内に「DX推進担当」が設置され、担当主査1名・兼務の主幹1名の計2名体制でスタートしました。
DX推進課は令和5年度に設置され、現在は兼務も含めて6名体制となっています。なお、情報システム課は、DX推進課と同じ企画部内に別途で設置されていて、市のDXの推進はDX推進課が専任でおこない、機器やシステムの管理は情報システム課がおこなう、という位置づけになっております。また、DX推進課のメンバーは、必ずしもシステム担当の経歴やスキルがあるわけではありません。
他の市町村では、情報システム課(部門)がDX推進を兼務・担当されたり、もしくはDX推進担当課長や係長のみを新たに設置・採用されたりというケースも多いかと思いますので、DX推進に特化した課を新たに設置するのは珍しいかもしれませんね。
―書かない窓口におかれては、DX推進担当はどのように活動をされていたのでしょか。
市民課 DX推進担当には、市民窓口サービス検討委員会にも出席をいただくだけでなく、各連携課との連絡調整や情報共有、委員会以外での個別の打ち合わせの場を設ける際など、様々なフィールドで活発的に動いていただきました。
なお、今年度はDX推進担当から新たに、DX推進課が設置されましたが、書かない窓口を導入後も引き続き、各課との連携の手助けのほか、全庁的なDX推進に向けて様々な取り組みを推進いただいています。
DX推進課 サポート自体はDX推進担当もしておりましたが、書かない窓口が検討・実施から1年も経たずに導入まで実現できたのは、これは実際の現場で業務を担当されていた市民課が自分事の一つとして、旗振り役となっていただけたからだと考えています。また、庁内で既に「市民窓口サービス検討委員会」という会議体があったのも功を奏しました。
DX推進担当やDX推進課のもとで1から書かない窓口を推進していく、という体制になっていたら、もう少し時間がかかっていたのではないかと感じた次第です。
なお、昨年度の取り組みとして、書かない窓口以外では、青梅市全庁の業務量調査・可視化調査もDX推進担当で実施しました。その結果、職員がノンコア業務(職員以外でもできる業務)に費やしている時間が非常に多いということも分かったので、デジタルツールも活用することでノンコア業務を圧縮し、そこで浮いた職員の時間を、本来やるべきコア業務(職員でなければできない業務)に活用可能な体制を今年度以降、創り上げていきたいと思います。
全庁推進に向けてマインドセット研修などを実施
―DX推進課では、今年度はどのような取り組みをしているのでしょうか。
DX推進課 DX推進のためには「これからの時代、何が求められてどう変革していくべきか」を理解したうえで、「それらの物事をしっかりと自分事のビジョンとして捉える」ということが必要だと考え、まずは管理職の職員を対象とした、マインドセット研修を実施し、DX推進への理解を得る場を設けております。
また、マインドセットが完了してDX推進への理解が得られても、彼らの下に居る職員にも知識が無ければDX推進が進められませんので、人材育成の一環として「DX推進員制度」を導入しました。本制度は、青梅市にある約60の各課から1名、DX推進員を任命していただく制度となりますが、DX推進員には今後、職場(課)の中核となっていただきながらDXを推進していただけるよう、各種研修を進めております。
そのほかにも、BPR(ビジネスプロセス・リエンジニアリング、業務改革)の取り組みに対しての考え方の研修や、デジタルツール研修など、様々な社歴の職員を対象として育成・研修活動を推進しています。
業務改善は自分ごと。市民・職員の双方に良い結果を生みだす
―デジタル化の取り組みを市として進めていくにあたり、組織や職員として、どのようなことを意識する必要があると思いますか。
市民課 「業務改善を自分ごととして捉える」というお話もありましたが、書かない窓口に取り組むこと=書類・記載台を市役所から無くすこと自体が目的ではなく、市民の方が便利になったうえで職員の手間も増やさない、双方にとってより良い業務改善につなげていくのだということを念頭に置いたうえで、同じ組織目標に向かっていけるマインドを持つことが大事かと思います。
また、市民課はデジタルに抵抗の無い若い職員も多く、業務改善を積極的に進める風土が自然と出来上がり、他の課との連携や交渉についても柔軟性を持ったうえで取り組めたと考えています。
一方で、市役所には往々として異動もありますが、市民課は新任の職員が特に多いです。日々の業務を覚えるだけでも精一杯にも関わらず、デジタル化の対応にも追われてしまうので、そこはしっかりと先輩職員としてサポートをしつつ、若い職員だけに任せることなく、一緒にデジタル化に取り組んでいくことは私自身も強く意識しています。
DX推進課 世の中全体でデジタル化が進展しているなか、まずは「市民の皆様がどういったサービスを市役所に求めているのか」という点についてはアンテナを高く張ったうえで、情報収集に努めていただき、そのうえで「数多あるデジタルツールの中からどれを選択すれば、職員の手間も増えることなく、市民の皆様に要望に応えることが出来るのか」と順序立てて検討を進めていかなければならないと思います。
また、市民の皆様、とは言いますが、我々自身も市役所職員でありながら、青梅市の一市民でもあります。要は、市役所職員が働きやすい職場・組織を作れば、それは結果的に自身を含む、市民サービスの向上に繋がります。
このデジタル化の取り組みを自分ごととして捉え、そのためには庁内横断によるデジタル推進の体制づくりもしたうえで職場を盛り上げていかなければ、デジタル化の取り組みをスタートさせるまでに時間がかかってしまうのではないでしょうか。
市役所自体を素敵な職場にしていくことで、市民サービスが改善されるだけでなく、そこで働く職員も輝き、結果的に青梅市という町自体も輝いていくことが理想的なデジタル化だと思います。
※ 前編はこちら(URL)。