山都町、移動燃焼源(自動車)から排出される温室効果ガスの実測ソリューションの実証実験をユナイテッドトヨタ熊本×テックシンカーと開始[ニュース]
熊本県山都町は、UXアクセラレーションプログラム2022において、株式会社テックシンカーとユナイテッドトヨタ熊本株式会社と協働し「車両のCO2算定サービス」の実証実験を2023年2月上旬から実施する。本実証実験は、「燃料ベース手法」と「距離ベース手法」を組み合わせた測定方法を採用し、IoTデバイスとWEBアプリを通じて走行距離と燃料使用量をモニタリングすることで、排出量を実測ベースで算出する。
実施背景
■2050年、カーボンニュートラル・脱炭素社会の実現へ
昨今、異常気象などの気候変動による問題が顕在化し、主な原因である温室効果ガスの排出削減が世界各国で求められている。日本政府も2020年10月に、2050 年カーボンニュートラル・脱炭素社会の実現を目指すことを宣言した。カーボンニュートラルな社会に移行するためには、運輸部門におけるCO2排出量の約85%を占める自動車分野の電動化を進めることが重要だ。こうした中で効率的かつ効果的に低炭素化を進めていくためには、的確な排出量算出と電動化によるCO2削減効果の分析が不可欠である。
■地域社会には、脱炭素化のための専門知識や人材が不足している
脱炭素化を目指す自治体・企業の多くは、計画立案フェーズにおいて現状を把握し計画を策定する際、脱炭素化に関する知見を有した人員が不足しており、さらに削減効果等の情報不足により、中長期的な観点での施策の立案や実行になかなか踏み込めないのが現状だ。こうした現状を打開し、持続可能なまちづくり及び企業・組織の低炭素化に向けた計画立案や施策の実行を加速させるため、排出量や施策の削減効果を見える化するためのソリューションが必要である。
■換算ベースや簡易推計は実態とのズレや乖離が生じる
現状、国内では“活動量の排出原単位(調達金額ベース)”により算出する方法の方がデータ収集の手間が省けるため、換算ベースや簡易推計を利用する企業・組織がほとんどである。しかし、欧州は換算ベースや簡易推計による算出は実態とのズレや乖離が大きいことから、「実測ベース」を重視する取り組みが広がっている。また、対外的な発信や排出量の検証等を利用目的とするのであれば、算出精度の高い「実測ベース」が求められる。
■実測ソリューションの開発により、標準化を目指す
一般的に精度が高い算定手法が望ましいですが、その分算定に係る作業負担が大きくなる。事業者の作業負担を減らし、算出精度を最大化するための新たなソリューションが必要だ。今後、排出量の外部開示が広く求められていく中で、より高い精度のデータを収集し、より正確に排出量を評価していかなければならない。実測技術やソリューションの開発により、業界の測定実績を積み上げ、実測技術や取り組みを標準化していくことを目指す。
実証実験概要
■実証実験概要
①燃料ベース手法と距離ベース手法を組み合わせた実測値により、正確に排出量を算出する
企業・組織は、活動ごとの排出量の測定・検証や対外アピール等を行うために、正確性が高いデータ/算定手法を採用する必要がある。本実証実験は、自動車の移動燃焼源の排出量算出の精度を最大化するため、GHG プロトコルが推奨している燃料ベース手法と距離ベース手法を組み合わせた測定方法を採用する。こうした2つの算定アプローチを組み合わせることで、CO2は燃料使用量から、またCH4及びN2Oは移動距離から「実測ベース」で算定することが可能となり、より正確に排出量を推計できる。また、データ取得の負担を軽減するため、IoTデバイスとWEBアプリを活用して活動量データ(下記)を収集する。
●主な活動量データ:実際の走行距離、燃料使用量等
●データ収集ガイダンス:走行距離の自動測定、燃料領収書の登録等
②IoTデバイスで走行距離を取得
シガーソケットを利用して手軽に設置可能なGPSトラッカーとデータ通信用のSIMカードを用いて、車両の走行データを取得する仕組みを構築します。車のシガーソケットに設置するだけで利用できるデバイスを用いることで、現場の負担を軽減することが狙いである。また、デバイス自体には通信用モジュール、GPS、加速度などのセンサーが内蔵され、車両の位置情報を可視化することができる。
③WEBアプリで燃料使用データを取得
燃料使用データは、WEBアプリを通じて使用量を記録します。スマホを通じて入力した情報を排出量の算出システムに取り込みやすいデータ形式にすることで、現場の情報入力の手間を最小化する。WEBアプリは予めダウンロードする必要はなく、インターネット(ブラウザ)より簡単に利用することができる。
実証実験のスケジュール
期間(予定):2023年2月上旬~2023年3月下旬
実測車両数(予定):山都町の所有車両10台
■UXアクセラレーションプログラム2022について
https://unidge.co.jp/project/ux_accelerationprogram2022
(執筆:デジタル行政 編集部 加納 奈穂)