八王子市、高齢者健康増進に向けた日本初の大規模実証実験を実施 – 産官学連携の持続可能な健康施策構築へ[ニュース]

八王子市、高齢者健康増進に向けた日本初の大規模実証実験を実施 – 産官学連携の持続可能な健康施策構築へ[ニュース]

八王子市は、脳科学に基づいた脳の健康維持・増進するスマートフォンアプリ『脳にいいアプリ』を運営する株式会社ベスプラと、東京都が主催する「令和3年度 東京都次世代ウェルネスソリューション構築支援事業 事業化促進プロジェクト」に採択された「脳にいいアプリと健康ポイントを活用した持続可能なウェルネスプラットフォーム構築」において、「高齢者」と「健康に資する商品・サービスを展開する事業者」をつなぎ、持続可能な健康施策『ウェルネスプラットフォーム』の実証実験を2022年11月から東京都八王子市にて開始する。
当実証実験は産官学連携の持続可能な健康ポイントICTサービスの領域において日本初の試みとなる。

東京都が主催する「次世代ウェルネスソリューション」とは

東京都は、デジタルの力で東京のポテンシャルを引き出す「スマート東京」の実現に向け、先端技術等を活⽤した分野横断的なサービスの都市実装を⽬指している。
この取組の⼀環として、健康医療といったウェルネス分野におけるデータを活用した予防研究や新たなサービスの開発につながる社会実装モデルを検討するため、将来的な事業化を目指すプロジェクトを支援している。
ベスプラは、2021年10月に、様々なデータを活用した新たなウェルネスソリューションの事業化に向けた基盤整備やデータ整備を行う「事業化促進プロジェクト」に採択され、ウェルネスプラットフォーム構想をまとめ2022年3月に発表した。
当プロジェクトは本構想を実装したサービスの実証実験となる。

当プロジェクトは、ベスプラと、八王子市、公益社団法人八王子市シルバー人材センター、旭化成ホームズ株式会社、株式会社イトーヨーカ堂、株式会社セブン‐イレブン・ジャパン、株式会社セブン&アイ・フードシステムズ、パーソルテンプスタッフ株式会社、京都大学経営管理大学院ブレインヘルスケアビジネスエコシステム寄附講座(オブザーバー参加)と連携の上、実施される。

超高齢社会の健康施策における課題

高齢化の進展に伴い、医療・介護コスト増加やケア人材不足、社会・経済の担い手減少など、さまざまな課題の深刻化が懸念されている。
そのような中で、持続可能で活力ある社会を維持するには、「①高齢者が自らの健康を守るセルフマネジメント」、「②高齢者の健康づくり・生活支援を行う民間市場の健全な発展」、「③地域を支える力としての高齢者の活躍推進」などが鍵になると言われている。
特に①については、自治体でICTや健康ポイント制度を導入するケースも見られますが、費用・自治体側の運営人員の継続的確保や効果測定に課題がある。

自治体に健康維持アプリ×健康ポイントICTサービスを提供

べスプラは、高齢者の脳と体の健康維持アプリ『脳にいいアプリ』を運営しており、令和3年度より八王子市に当アプリと健康ポイントを連携したICTサービス(通称:てくポ)を提供している。
2022年10月現在、八王子市市内で約1,100名の高齢者が利用しており、将来的には八王子市の高齢者誰もが知るサービスとなることを目指している。

持続可能な健康施策「ウェルネスプラットフォーム」の実証実験

今回、上記ICTサービス(通称:てくポ)と「健康に資する商品・サービスを展開する事業者」をつなぐことで、『ウェルネスプラットフォーム』を実現する。
仕組みとしては、「当ICTサービスから得られる健康や興味のデータ」と、各事業者から登録された「店舗・商品(栄養素含む)・サービス・イベント・雇用等のデータ」から、AI技術によるパーソナライズを実施し、リコメンドすることで、高齢者へ健康づくりに役立つ商品やサービス情報を提供する。
実際に「歩いて運動」「脳トレーニング」といった当社アプリを使って健康活動等を行った高齢者の方には、健康ポイントを付与することで行動を促す。
本健康ポイントの原資は事業者側が負担する事で、自治体側が健康ポイントを負担しない持続可能な健康施策を実現する。

地域住民・事業者・自治体“三方よし“ 持続可能な地域活性化・健康維持・企業活動を実現

本取組みは、地域住民、事業者、自治体の三者ともにメリットを享受できる持続可能なプラットフォームである。
具体的に、地域住民のメリットとしては、地域の様々なところで健康活動や消費活動、イベントへの参加や就労/ボランティア活動することで健康ポイントがもらえ、市内店舗で健康ポイントを利用することで地域活性化にも貢献できる。

事業者側のメリットとしては、地域住民への健康貢献や、高齢者に商品・サービスを知ってもらうタッチポイントにすることが可能だ。自社製品に興味を示したユーザの健康および行動データが収集でき、高齢者に対するマーケティングが可能となる。

自治体側のメリットとしては、当健康アプリによる市民の健康セルフマネジメントが進み、健康ポイントによる地域商業活性化が実現できる。

これらのデータを蓄積し分析することにより、行政コストを最低限に抑えながら市民の健康、経済の活性化、地域の担い手増を実現しつつ、京都大学との監修を受けEBPMへのデータ活用を狙う。

脳科学に基づいた脳の健康維持アプリ『脳にいいアプリ』とは

認知症研究における世界的権威のカロリンスカ研究所が実施した研究をベース(*)に開発された、運動・脳トレーニング・食事の複合的な活動が管理できるアプリ。

(*)食事指導・運動指導・認知トレーニング・生活スタイル指導などを組み合わせることが、軽度の認知機能障害進行の抑制に有効であることを世界で初めて証明した研究

(執筆:デジタル行政 編集部 加納 奈穂)